2009年7月29日水曜日
SEIUのメディア戦略
SEIUは、組合づくりに力を入れるために、メディアを有効に活用する組合として優れている。それは年間に制作する映像作品の数からもわかる。本部の3人のスタッフは、5〜6人のフリーランスの映像制作者とともに、年間65本のビデオを制作するという。それらは、組織化や選挙キャンペーンの集会などで、組合員向けに上映される。また、一般向けにはインターネットでも配信する。
それらの映像作品のなかに「Our digital stories (私たちのデジタル・ストーリー)」という映像プロジェクトがある。2004年からスタートし、これまでに100人のストーリーを約3分の映像に描いてきた。
なぜ組合が必要だったのか?—そこには、100通りの理由と過去がある。それを本人の言葉で語ったものだ。労働運動には、職場や地域の人たちの共感が必要だ。「Our digital stories」は、その共感を呼び覚ますプロジェクトであると感じた。
SEIUのメディア戦略は、もちろんビデオ制作だけではない。マス・メディアやインターネット・メディア、デザインを駆使して、より増員されたスタッフがコミュニケーション部門のなかで、連携しながら活動している。そのようすについては、次の機会に詳しく書きたい。
2009年7月28日火曜日
これが3分ビデオの骨頂だ!!
いかがでしたか?「The Job」のほかにも、今後、このブログで3分ビデオを紹介します。
2009年7月25日土曜日
レイバーメディア・アクティビストとの出会い(7月24日)
ワシントンDCのAFL-CIO本部のなかに、「国際労働コミュニケーション協会 (International Labor Communications Association)」がある。各組合のコミュニケーション部門(広報)の担当者と労働分野のジャーナリストによるネットワーク組織である。私たちはこの事務所に立ち寄って、ひとりのレイバーメディア・アクティビストを紹介してもらった。
「UNION CITY」という日刊ニュースの編集長を務めるChris Garlockさん(写真)である。彼の所属は、AFL-CIO本部ビルの向かいにある「AFL-CIOワシントン首都圏評議会( Metropolitan Washington Council, AFL-CIO)」で、日本の連合の地域協議会にあたる組織である。
彼は同ニュースで、私たちの訪問について「言葉の壁をこえる映像の組織力」というタイトルの記事を書いてくれた。
http://www.dclabor.org/ht/display/ArticleDetails/i/80033
同記事では、私たちが昨年制作した、ハワイのホテル争議に関するビデオ作品が紹介されている。この作品は、アメリカの労働組合からの依頼を受けて制作したもので、日本人のホテル利用者に向けたメッセージが込められている。その意味で、映像は日米の労働運動をつなぐツールと言えるだろう。そのことを、クリスさんと私たちは改めて確認し合った。
クリスさんには、もうひとつの肩書きがある。それは毎年開催される「DC労働フィルムフェスタ」のディレクターという仕事だ。今年は10月13日から18日まで開催され、夜の映画館での上映のほかに、AFL-CIOや各産別組合のビルのホールを利用して、ランチタイムに無料の上映会が開かれる。そのなかには、マイケル・ムーアの「SiCKO」も含まれている。アメリカでは今まさに健康保険制度をめぐる議論が盛んなだけに、タイムリーな上映と言える。このように、映画館に足を運ぶ人たち以外にも観てもらいたい、という工夫と努力が伺える。
労働運動の世界では、コミュニケーションやメディア、映像という領域は脇役で、その活動の重要性に注目する人は少ない。しかし、SEIUのように組合づくりのためにコミュニケーション部門を拡張し、結果を出している組合もある。クリスさんが書いたように「映像の組織力」に今後も注目していきたい。
日雇労働者のための職業斡旋と訓練〜ワーカーズセンターの挑戦③(7月25日)

全米労働大学(National Labor College) の近くに、ワーカーズセンター「メリーランドの家( Casa De Maryland)」がある。これまで訪ねたワーカーズセンターのなかでは規模が一番大きく、活動領域も広い。労働分野にとどまらず、政治や生活、文化に関わる活動をおこない、コミュニティセンターという感じだ。ワーカーズセンターの活動はむしろ、「メリーランドの家」の一部門という位置づけであるようだ。中米出身の労働者ばかりでなく、カリブ海出身の黒人労働者も集まっていた。
センターは、日雇労働者のための職業斡旋所(ハイヤリング・ホール)を運営している。毎朝100名をこえる労働者たちが集まり、仕事を待つ。住宅の建設や改装などの仕事が多いため、センターでは住宅建設のための技能訓練もおこなっている。


Casa De Maryland のウェブサイト
http://www.casademaryland.org
組合が設立した労働者のための大学(7月25日)

ワシントンDC近郊のメリーランド州シルバー・スプリングに、労働組合が設立した「全米労働大学(National Labor College)」がある。AFL-CIOが1974年に George Meany Center for Labor Studies として設立し、2004年に大学としての認可を受けた。それを機に、名称は「全米労働大学」に変更された。大学は、教会の施設であったところに開設されたので、芝生が広がるなかにレンガ建ての建物が点在する美しいキャンパスである。


写真左の教材は、カリフォルニア教員組合が学校の教材として制作した。表紙の人物は、農業労働者組合のリーダーであるセザール・チャベスだ。教材は、その人物像を描きながら、労働組合や運動について学べるように作られている。英語とスペイン語で書かれていた。
写真右は、カリフォルニア大学バークレー校・労働研究教育センターが制作したテキストである。労働組合とは何か、その歴史と現状、労働者をめぐる課題、組合の必要性について書かれている。
「全米労働大学」については、以下の山崎精一さんの論文を参照してほしい。
鈴木玲、青野恵美子、山崎精一、中島醸「大学と労働運動、社会運動をつなぐ橋:アメリカの大学のレイバーセンターとは何か(下)」〔『労働法律旬報』1692号(2009年3月25日発行)掲載〕
National Labor College のウェブサイト
http://www.nlc.edu/
2009年7月24日金曜日
ワーカーズセンターとAFL-CIOとの画期的な連携(7月23日)
AFL-CIOの執行評議会は2006年8月、ワーカーズセンターとの連携を決定した。労働組合のナショナルセンターが、組合以外の 労働者組織の加盟を認めることは画期的なことだ。その結果、ワーカーズセンターは州や地方評議会 への加盟が認められた。(ただし、議決権はなく、年間の団体会費は州評議会が50ドル以下、地方評議会が25ドル以下である)
AFL-CIOは現在、組織率の大幅な低下に直面している。現在の組織率は12.4%で、ベビーブーム世代の大量退職により、今後さらに組織率は低下するだろう。こうした事態に対してAFL-CIOは、未組織労働者の組織化を進めるとともに、退職者ユニオンへの組織化、インターネット上の 「Working America」 への加入を進めてきた。
一方、SEIUなどのビッグ組合は2005年、AFL-CIOを脱退して新たなナショナルセンター「 Change To Win 」を結成した。それに対してAFL-CIOは、AFL-CIOに未加盟の組合でも、連帯憲章(Solidarity Chatar)に賛同すれば、州や地域レベルの評議会に加盟できるようにした。その結果、脱退組合のローカル(支部)が残留を続け、AFL-CIOに未加盟であるアメリカ最大の組合「全米教育組合(National Education Association )」のローカルが、州や地方評議会に加盟するようになった。
こうした動きを背景に、 ついにワーカーズセンターとの連携=加盟を認めるのは当然だ、という声が挙がったのだ。移民労働者を中心に未組織労働者を組織し、労働者の権利の確立をめざしてきたワーカーズセンターの存在が認められたことになる。

ワーカーズセンターとの連携から3年。すでに11のワーカーズセンターが州や地域の評議会に加盟する。また、家事や介護、育児に従事する労働者( Domestic worker )との連携も進んでいる。来年(2010年)のILO総会では、家庭内で働く労働者のディーセントワークについて取り上げられる。アメリカでは、家庭内で働く労働者は連邦労働法の適用から除外され、労働組合にも入れない。そのためAFL-CIOは現在、 National Domestic Workers Alliance と連携・協力しながらILOに提出する報告書を準備している。家庭内で働く労働者の代表が、来年のILO総会に参加することが期待されている。
こうした連携の一方で「依然として労働組合とワーカーズセンターとの間の壁は厚い」とアコスタさんは言う。一部には対立関係もあるという。両者の相互理解の促進と提携の構築に苦労する日々が続いている。
http://www.aflcio.org/aboutus/thisistheaflcio/ecouncil/ec08092006j.cfm
http://www.aflcio.org/aboutus/jointheaflcio/ndlon.cfm
2009年7月22日水曜日
最賃法違反は許さない!〜ワーカーズセンターとの連携(7月22日)
プロジェクトの実施者は、小売り・卸売り・百貨店組合(RWDSU:Retail, Wholesale & Department Store Union)で、組合は6名のオルグを配置して、ワーカーズセンター「Make the Road New York」やコミュニティと連携しながら取り組みを進めている。
同プロジェクトのコーディネーター・Jeff Eichler さんを訪ねることができた。小売り・卸売り・百貨店組合は、1930年代からニューヨークのデパートを組織してきた組合である。近年、デパートが斜陽化していくなかで、様々な小売店や食品産業を組織するようになった。現在はUFCW(全米商業食品労組)に加盟しているが、1993年までは独立組合だったという。
2005年にニューヨークを訪ねたときに、同組合と連携するワーカーズセンター「Make the Road by Walking」(上記「Make the Road New York」の前身組織)を訪ねて、商店街の小売店の最賃法違反や残業代未払い是正キャンペーンについて話を聞いた。そのときの簡単な報告を読んでもらうと、同プロジェクトへの理解が深まると思う。
プロジェクトは現在までに200名を組織したという。組織化した労働者数は決して多くないが、法違反を是正して地域の底上げを確実に図っているといえるだろう。
2009年7月21日火曜日
スターバックスのユニオンを訪ねて(7月21日)

スターバックス・ユニオン(Starbucks Workers Union) のオルガナイザー・Daniel Grossさんに話を聞いた。
アメリカの労働組合にしては珍しく企業名を冠し、20世紀初頭に隆盛を誇った、かのIWW (International Workers of the World:世界産業労働組合、現在の組合員数は約2000名)に所属する組合だ。グロスさんはIWWのオルガナイザーでもある。ユニオンの組合員数は約400名、ニューヨーク・マンハッタンを中心に、複数の州とカナダのケベック州に組合員がいる。
Solidarity unionism (連帯労働組合運動)を掲げ、既存のビジネスユニオニズム的な労働組合運動を否定して、直接行動を通じた相互支援を活動の基軸に置いている。

団体交渉ができなくても、様々なキャンペーンや直接行動を通じて、スターバックスの労働者たちの労働条件や職場環境の改善を進めている。この間、賃金の引き上げや適正な勤務時間スケジュール、組合バッチの着用、店内のネズミや虫などの駆除、安全対策などで改善を勝ち取ったという。
また、NLRBに認証されていなくても、組合員に対する差別や不利益取り扱い、組合活動への干渉や妨害などの不当労働行為は禁止されている。使用者からの組合攻撃に対しては、NLRBに不当労働行為の救済を申し立て、組合活動の権利を拡大している。
組織化については、組合員を2日間のトレーニングコースでオルガナイザーとして育て、各店でマンツーマンで組合への加入を呼びかけていく活動とインターネットを通じた宣伝活動の両方を使っている。
Minority unionism(少数派労働組合運動)とも言えるこの運動戦略は、組合認証選挙で勝つか負けるか、負ければ組合運動は消滅してしまう既存の労働組合運動とはまったく異なる新しい運動の地平を創り出していると言えるのではなかろうか。
しかし、スターバックスで働いていたグロスさんも2006年8月に解雇され、2008年12月に地裁で勝ったが、使用者側が控訴し闘いが続いているという。組合つぶしのための活動家解雇は、どこの国でも常套手段である。そして、救済を勝ち取るにも時間がかかることも同じである。
日本と同様にアメリカでもコーヒーショップやファーストフードの組織化はほとんど進んでいない。その点で、スターバックス・ユニオンの活動に学ぶ点も多い。
ユニオンのウェブサイト
http://www.starbucksunion.org/
2009年7月20日月曜日
UNITE-HEREのスタッフと久しぶりに再会(7月20日)




http://www.jca.apc.org/apwsljp/report/losangels/NY/NY.htm




UNITE-HEREから一部グループが脱退して、Workers United を結成してSEIUに加入した経緯を伺った。SEIUの強引な対応に歪みが出てきているなあと感じられた。
ルーベンさんの事務所にあった1945年のローカルの大会の写真はなかなか圧巻であった。

早朝、ユニオンの抗議行動に遭遇(7月20日)

宿泊したアパート前が朝早くから騒がしい。そのうち「ユニオン」「ユニオン」とシュプレヒコールが聞こえてきた。何が起きているのだろうと思って表に出ると、なんと労働組合の抗議行動だ。アパートの向かい側は州兵の部隊本部である。部隊本部がノンユニオン(非組合)の会社に仕事を発注して、ニューヨークの組合賃金を破壊していることに対する抗議行動だった。
ティームスターズやカーペンターズ、電気工組合(IBEW)などの様々な組合から50名くらいの労働者が集まっている。それも、がっちりとした体格の男ばかり。巨大な動物(リス?)も支援に駆けつけている。現時点で4時間くらいシュプレヒコールを上げ続けている。(ニューヨーク時間7月20日午前10時)

2009年7月18日土曜日
家事・介護・育児労働者の連帯 〜ワーカーズセンターの挑戦②(7月16日、18日)
Domestic Worker たちの街:ニューヨーク
ニューヨークは多くのdomestic worker(家庭内で働く労働者)たちが働く街である。グローバル都市ニューヨークの主力産業は、金融産業やサービス産業である。そこで働く上流・中流クラスの専門職ホワイトカラーの生活を支える様々なサービス産業がある。それは、レストランやタクシー、警備などの産業である。さらに在宅介護や保育・家事をになう20万人のdomestic workerたちがいる。その多くがアフリカ系の黒人やカリブ海、中南米やアジアからの移民女性たちである。
7月16日、マンハッタンの中央に位置するミッドタウンのエンパイヤステートビルの近くのビルの一室にあるDomestic Workers Unitedを訪ねた。
リードオーガナイザーのAi-jen Pooさん(中国系2世)とオーガナイザーのJoycelyn Gill Campbellさん(カリブ海出身)に会って話を聞いた。
以下のYouTubeビデオは、訪問したときに撮影したビデオの簡易編集版である(字幕がないので、概要は下記文章を参照下さい)。
Domestic Workerたちの現状
Domestic Workerたちには公正労働基準法(FLSA)や労働安全衛生法(OSHA)が適用されない。低賃金で長時間労働が蔓延している。有給休暇や病気休暇もない。雇い主の家庭内で働くため虐待や暴力、セクシャルハラスメントも絶えない。そして、全国労働関係法(NLRA)が適用されないため労働組合を結成する権利もない。
組織化によって現状を変えよう
Domestic Workers Unitedは2000年、domestic workerたちを組織化することによって、現状を変えようとスタートした。
主要な活動
(1) 会員の組織化
ベビーシッターたちがよく集まる公園やバス停でのビラまきを手始めに、一人ひとりに声をかけて加入してもらう活動を続けている。専従オルガナイザー4名に、16名の執行委員会が中心となってボランティア・オルガナイザーたちが組織化活動を進めている。現在、2300名の会員がいる。
(2) 教育活動
教育活動には熱心である。コーネル大学レイバーセンターと連携したベビーシッターたちに対する総合的なトレーニングプログラム(保育者としての基本知識とスキル、安全衛生、雇い主とのコミュニケーションと交渉)や、YMCAと連携した第二言語としての英語教育やコンピュータ教育、リーダーシップ・トレーニングプログラム(組織化、社会変革理論、基礎的政治経済学、Domestic work産業史)、その上級プログラムなどを実施している。
(3) 労働相談と解決、雇い主の意識改革
個別のDomestic workerからの相談や情報提供などの労働相談活動や、賃金未払いなどの案件については雇い主への申し入れや交渉を行っている。悪質な雇い主に対しては、その自宅(domestic workerの職場)や雇い主の職場前で抗議行動をやることもある。こういった取り組みをとおして、雇い主の意識改革にも取り組んでいる。
(4) Domestic Workers Bill of Rights制定キャンペーン
現在、ニューヨーク州議会に対して、Domestic Workers Bill of Rights(Domestic Workers権利法案)の制定キャンペーンを進めている。20万人のDomestic Workerたちの雇い主は20万人いる。その一人ひとりと交渉して労働条件を改善することは不可能である。労働法の適用を除外されているdomestic workersたちの権利を確立するためには法的に権利を確立するしかない。
その具体的内容は
・ 5割増の時間外休日労働手当の支給
・ 消費者物価指数の上昇にあわせた毎年の賃金引き上げ
・ 週1日の休日、有給休暇(5日の病気休暇、5日の個人休暇、勤続年数に比例した2週間から5週間の休暇、祝日の有給休日)
・ 21日前の解雇予告、解雇手当(勤続年数×週給)
・ ニューヨーク雇用差別法の適用
・ 健康保険の加入
・ 違反した雇い主に対する訴訟する権利、州労働長官と司法長官の訴訟代理権、ニューヨーク市と7つの周辺の郡に適用
(5) 文化運動
自分たちの経験や闘いについて話り、書き、劇にしたり、音楽や歌やダンスなどの文化活動に毎月取り組んでいる。
(6) National Domestic Workers Allianceの結成
2007年にはNational Domestic Workers Allianceを結成し、全米各地のDomestic Workerたちの組織と連携をしている。また、他の社会運動との連携も進めている。Domestic Workers Bill of Rightsの制定キャンペーンは、様々な労働組合や社会運動、コミュニティ運動組織の賛同を受けて運動を進めている。
会員総会に参加して
7月18日、月例の会員総会が開催され、そこに参加することができた。執行委員でボランティア・オーガナイザーであるLois Newlandさん(写真右・カリブ海出身)から組織化について話を聞いた。自ら介護労働者として日々働きながら、バス停や公園でのビラを配り、組織化に取り組んでいるという。彼女は、在宅介護労働者を組織するSEIU1199の組合員でもある。
Domestic Workers Unitedのウェブサイト
2009年7月17日金曜日
増える労働相談〜ワーカーズセンターの挑戦①(7月17日)
マンハッタンから東へ地下鉄で30分、さらにニューヨーク市の東部郊外のJamaica駅でロングアイランド鉄道に乗り換える。そこから約30分でHampstead駅に到着する。途中、緑豊かな高級住宅地が続く。駅を出ると雰囲気はがらりと変わった。労働者の街である。駅から5分のところにWorkplace Projectの事務所があった。
事務所で、Nadia Marin-Molinaさん(Executive Director・ロースクールの時にインターンとして働き、1996年から専従スタッフ)と、インターン中のロースクールの女子学生から話を聞いた。
Workplace Projectは1992年、労働と生活条件の改善のために、移民労働者とその家族の会員組織として設立された。ロングアイランドの住民の12%である33万人がラテン系(中南米系)住民である。その使命は、低賃金(平均賃金は2万ドル、約200万円)で劣悪な労働条件で働くラテン系民労働者たちに対する搾取をやめさせ、コミュニティにおける政治的・経済的・文化的な参加を促進することによって、社会経済的な公正を実現することである。
主要な活動:
移民政策改革(合法化、強制送還の停止、家族の再会、国境の壁の廃止)、労働者の権利(Domestic Workers Bill of Rightsの制定、ニューヨーク州労働局の監督・違法是正の強化、職場での虐待や法違反に対して闘う労働者の支援)、住宅(住宅差別の撤廃、低家賃・低価格で入居できる住宅建設の促進)、市民的な包摂(政治的経済的文化的コミュニティへの包摂、有権者登録)などへの取り組みである。
労働者の権利コースや英語クラスなどの教育に力を入れている。日雇労働者センターやFarmingvilleにコミュニティ組織化センターを設置している。Domestic Workers Unitedとも連携して、住宅清掃の労働者の組織化を進めている。また、Laborers(建設労働者の組合)の住宅建設労働者の組織化に協力している。
2006年春、移民法改悪に反対するデモが全米各地に広がり、5月1日、Hampstead駅前に5000人の移民たちが集まった。
労働相談:
労働相談は、年によって増減があるが、400件ほどである。毎週火曜日の夜、労働者委員会で労働相談を受け付ける。その多くが賃金(時間外休日労働手当を含む)未払いや不当解雇、有給休暇が 取れないこと、安全衛生問題などである。解雇が自由なので、不当解雇への取り組みはなかなか難しい。賃金未払いについては、使用者に対して手紙や電話で支払いを 督促する、直接交渉する、次はニューヨーク州労働局へ申し立てる、などの手順で進められる。賃金未払いをくり返す悪質な使用者に対しては、労働局へ告発して逮捕させ ることによって制裁をしている(逮捕された使用者の顔写真が事務所に張り出されていた)。相談者の99%はラテン系だが、同じ職場にいるアジア系やアフリカ系の労働者が一緒に訪ねてくる場合もある。
会員になるためには:
労働相談やWorkplace Projectに関心を持って訪れた労働者には、労働者の権利コースを受講してもらい会員になる。現在までに900名のコース修了者がいるが、日常的に活動に参加している会員は80名から100名くらい。会費は月5ドル。また、会員の組織化や活動の宣伝のために、地元のスペイン語新聞に記事を書いてもらい、無料で広告を掲載してもらっている。
※労働者の権利コース:年に4回ぐらい開講、8週間コース(土曜日か日曜日に開催)、内容は労働者や市民としての権利、安全衛生、労働・移民史、連携しているクレジット・ユニオン(信用組合)の活用などについて
財政とスタッフ体制:
収入の65%から70%は民間財団からの助成金。4名がフルタイム専従。
以上がWorkplace Projectの概要である。ラテン系移民コミュニティに基盤を持った労働者センターである 。
Workplace Projectのウェブサイト http://www.workplaceprojectny.org/